東芝の悲劇/大鹿靖明

名門企業が没落するまでを整理したドキュメンタリー。
知人が実名で記載されており、精緻な取材がうかがわれる。
一気に読了。

経済産業省やその他の官僚も出てくるので、有名大企業への主食を目指す人のみならず、国家公務員を目指す人にもお勧めかも。

『村田の前任の広瀬勝貞次官は02年5月・・・(略)・・・エネ庁の電力市場整備課や原子力政策課で核燃への問題意識を育んだI、Yら若手の課長補佐、係長の六人が遊撃隊として核燃凍結を求めて決起した。・・・(略)・・・結局彼ら遊撃隊の多くは04年7月、任務を外された。後に同省を退官したり、京都府横浜市に出向させられたりし、いわゆる出世コースから逸れることになる。このとき村田は、前線に送り込んだ彼ら少年兵を助けなかった。以来、村田はこのときのことを「私の心の問題から語らないことにしています。」とあまり語りたがらない。電力業界にスキャンダルを握られ、沈黙を強いられているとも噂される。』(pp192-193)

『歴史に「if」はないというが・・・(略)・・・東芝の元広報室長は「模倣の西室、無能の岡村、野望の西田、無謀の佐々木」と評したが、この四代によって、その微風が損なわれ、成長の芽が摘み取られ、潤沢な資産を失い、零落した。東芝で起きたことは、まさに人災だった。教訓として言えることは、傍流からの抜擢人事は、こと日本の大企業においては成功しない。失敗企業の失敗経営者はみな、院政を敷きたがった実力者によって引き上げられた”くぐつ”であた。傍流の男は、会社の中枢や全体のことが分からない。実力者の腰巾着に過ぎない凡庸・愚鈍の人であり、そもそも将の器ではないのだ。・・・(略)・・・彼ら会計士は、「独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保する」という公認会計士法第一条に定められた使命を忘却していた。・・・(略)・・・企業法務で有名な弁護士たちも同罪だった。・・・(略)・・・やはり弁護士法第一条の「社会正義を実現することを使命とする」は建前に過ぎず、彼らはカネを払ってくれるクライアントのためならば何でもした。・・・」』(p353~p355)

戒めになります。

以下はAmazonからの引用。
内容紹介
虚栄。嫉妬。粉飾。責任逃れ。 
社員20万人を擁する名門企業の、かくも無様なトップたち。 
これは日本の悲劇でもある。 
東芝崩壊の全真相がわかる、決定版・調査報道ノンフィクション。 

粉飾決算原子力事業の失敗、主力事業の切り売りと、 
日本を代表する名門企業が瀕死の危機に瀕している。 
東芝の凋落は、経済環境の変化や技術革新に対応できなかったからでなく、 
強大なライバルの出現により市場から駆逐されたからでもない、と著者。 
20年にわたり東芝を取材してきた著者が、 
歴代社長の「人災」という視点から、東芝崩壊の全貌を生々しく描き出す。 
権力に固執し、責任をとらず、決断できないリーダーたち。 
これは今まさに、あなたの会社でも起きている現実かもしれない。 
全サラリーマン必読! 第一級の調査報道にして衝撃のヒューマンドキュメント。